ブラジル北部は、国土の42.27%を占める5地域中最大のエリアで、アクレ、アマゾナス、ホライマ、ホンドニア、パラー、アマパー、トカンチンスの7州で構成されています。その広大な面積のほとんどを世界最大の熱帯雨林であるアマゾン熱帯雨林が占めています。広さだけでなく、国内最高地点である山脈ネブリナ山(2,994m)もここアマゾナス州にあります。北部の気候は、高温多湿な赤道気候のため年間を通してあまり変化がなく平均気温は25度以上です。
アマゾン熱帯雨林はその大きさから「地球の肺」とも呼ばれていますが、近年では、放牧地や飼料用大豆栽培用地の開墾を目的とした森林破壊が深刻な問題となっています。50年前と比較して熱帯雨林の20%が消滅、2019年には農家が開墾のため放った火が広がりさらに10%が焼失したと言われています。
熱帯雨林を流れるのは世界最長(※諸説あり)のアマゾン川で、世界の真水の17%が集中しており、川の総面積はオーストラリア大陸に匹敵します。平均水量は毎秒約20万トン、雨季には川幅40km、水深が40mにもなりそのスケールの巨大さがわかります。アマゾン川には橋がかかっていないため、ボートや船が地域の主な交通手段になります。
北部地域の主な産業は、牧畜や大規模農業と、パラー州とアマパー州の鉱業です。1870年に天然ゴムの原料ラテックスの採取が始まり、1910年にはゴムのとブラジルナッツの採取にひかれスペイン、ポルトガル、フランスから移民が入ってきました。その後現在のアマゾン流域の主要都市であるベレンとマナウスが建設され、石油や天然ガスの採取も始まります。1960年まで地域の工業化は進んでいませんでしたが、1967年にマナウスが「マナウスフリーゾーン(免税都市)」に指定されてからは、ホンダやヤマハなどの日系企業、アメリカ・ヨーロッパ系企業の工場が数多く進出しています。また、マナウスやベレンには比較的大きい日系人のコミュニティーもあります。
アマゾン川流域は、国内最大数の先住民の居住地があることでも知られています。ブラジルでは今までに約305の先住民族が確認されていますが、そのほとんどがアマゾン流域に暮らしています。さらに、約80のグループが未だ文明との接触なしに暮らしていると信じられています。
北部の文化、習慣、宗教、祝祭、食文化には、先住民、ヨーロッパ系移民、黒人文化の融合が見られます。郷土食は、マンジョッカ(キャッサバ芋)と魚類が中心であり、熱帯雨林でとれるガラナ、アサイー、クプアスー、グラビオーラなどのフルーツも豊富です。
北部の主な観光拠点は、アマゾン河口都市でアマゾンの玄関口として発展した街ベレン(パラー州首都)、アマゾン地域最大都市で開拓時のコロニアル調の建物が残るマナウスがあります。ベレンからマナウスもしくはその先の上流都市イキトス(ペルー)まで、アマゾン川をハンモックに揺られながら船で上るルートは1週間ほどかかる気長な旅ですが、アマゾン川の雄大さを肌で感じることができます。
マナウスはジャングルツアーの拠点でもあり、典型的なツアーでは2~4日間で、ピラニア釣り、夜のワニ観察、ジャングルウォーク、キャンプ、インディオの居住地訪問、早朝のイルカやコンゴウインコの鑑賞ツアーなどが楽しめます。アマゾン川のカヌーツアーは川の水位が高い3月~7月がベストシーズンです。アマゾン川から離れたところでは、トカンチンス州ジャラポンが体が浮く湧き水や大自然の雄大な景観で人気の観光スポットです。